英雄惑星エスガプール


英雄惑星エスガプールはアルダン帝国の惑星。アルダン帝国との戦争(いわゆるメガ戦役)において壮絶な防衛戦を展開し、後に英雄惑星の称号を授与された。


地上戦まで


メガ戦役まで

 惑星エスガプールはアルダン帝国の領土の端にあり、エル帝国との国境付近に存在していた。
 このため、エスガプールは戦時には最前線となることが常に想定されており、かつては宇宙艦隊の出撃拠点及び補給拠点として惑星の開発が進められていた。しかし、特定の惑星に艦隊を駐留させることは軍閥化を招く恐れがあり、1577年の軍部クーデター未遂事件以降は艦隊は首都に集中して駐留するよう政策変更されたため、エスガプールは艦隊が駐留する宇宙港を備えた前線拠点惑星から最前線の要塞惑星へと変化した。

開戦

 エル帝国のアルダン侵攻が始まると、エル帝国の電撃作戦により宙域は次々にエル帝国の手に落ちていき、エスガプール宙域もエル帝国艦隊に制圧された。しかし、第二次ノストの戦いまでは楽観的な見方が主流であり、エスガプールもアルダン帝国艦隊の反撃が成功するまでの短期間だけ惑星を守り切るための防衛計画が実行されていた。
 ところが第二次ノストの戦いでアルダン帝国が敗北すると、エスガプールを救援する余裕がないことが明らかになり、惑星はパニックに陥った。
 惑星防衛司令部は高速船を集め、市民10億のうち30%にあたる3億を本国へ脱出させたが、残った7億の市民を脱出させる船は存在しなかった。また、高速脱出船も少なくない数がエル帝国艦隊に発見され、拿捕・撃沈された。

エル帝国の降下作戦準備

 狭義のメガ戦役が始まり、アルダン帝国とエル帝国の戦闘が激しい消耗戦になると、エル帝国は当初の電撃攻略を断念し、制圧した宙域の所惑星へ降下を行いアルダン帝国の反戦機運の高めようと画策した。
 中でもエスガプールは戦前からの要塞惑星であり、ここを攻略することはアルダン帝国に対するインパクトが強いと判断され、エル帝国は地上戦火力を集中投入した。


参加兵力


アルダン帝国

 要塞防衛軍(ヤン上級少佐)
  兵力5000万
  戦車300万両
  火砲200万門
  地上作戦機(航空機)5000機
 
 エスガプール臨時軍
  兵力1億
  火砲5万門
  地上作戦機(航空機)350機
 
 市民志願軍
  兵力3億5000万
 
 その他市民
  兵力2億
 
 宇宙艦隊陸戦隊
  兵力200万
  戦車50万両
  地上作戦機(航空機)150機

エル帝国

 地上第2方面軍(ドルン上級中将)
 地上第3方面軍(オブリアン上級中将)
 地上第8方面軍(ミル中級中将)
 
 兵力2億
 戦車6千万両
 火砲4千万門
 地上制圧機(航空機)20万機
 強襲降下艦1万隻
 特別地上支援艦53隻
 輸送艦2万
 
 兵力こそアルダン帝国が勝っていたものの、その大半は市民兵であり、戦力として期待できるものではなかった。
 戦車で10倍、火砲で20倍、航空機で40倍、地上支援艦では53対0、正規軍兵力ですら4倍という圧倒的な火力差を前に、エル帝国のドルン上級中将は参謀本部に惑星攻略日数を半月と報告していた。ドルンは電撃的な攻略で勲章を狙っていたとも言われる。
 しかし第8方面軍のミル中級中将は事前の潜入工作情報から、惑星の防備が非常に強化されていることに気が付き、ドルン上級中将に作戦の見直しを具申したが、それが聞き入れられることはなかった。


戦闘の推移


準備爆撃

 1585年7月、エル帝国の降下作戦は猛烈な爆撃で幕を開けた。
 特別地上支援艦による4日間の爆撃で要塞は破壊の限りが尽くされ、後に火の4日間と呼ばれた。

降下

 5日目朝には先遣降下隊500万人が降下を開始した。
 先遣隊が降下ポイントを確保すると、エル帝国は奇襲効果による電撃攻略を行うべく、その日のうちに主力部隊も続いて降下した。
 しかし、アルダン帝国は兵力の重点を要塞ではなく惑星全体へ分散させており、要塞方面へ過度な戦力を投入したエル帝国は各地で兵力不足となり、要塞方面の部隊が移動してくるまでの期間、アルダン帝国の攻勢に苦しめられた。
 こうしたエル帝国の意表を突いた作戦はヤン上級少佐の作戦によるものであり、偵察を怠り早急な主力軍の降下を行ったアルダン帝国は序盤から攻略に躓く結果となった。

エスガプール線の戦い

 エル帝国が要塞方面から惑星各地へ兵力移動を行うと、アルダン帝国軍は無理な抵抗は行わずに部隊を事前に計画したラインへと撤退させた。
 エスガプール線と呼ばれた塹壕戦網は惑星の直径にも迫る長さとなっており、各地には簡易ながらも強固な塹壕線が途切れめなく、数段に渡って掘られていた。
 円状のエスガプール線を攻撃するエル帝国は外線となり、突破のために兵力を集中したとしても、内戦の利を活かしたアルダン帝国は早急な戦力集中が行えるようになっていた。
 また一度突破したとしても、その後方にはさらなる塹壕ラインが準備されており、市民の動員によって塹壕ラインは時間を追うごとに強化されていた。
 ドルン上級中将は3度にわたり総攻撃をかけ、エスガプール線の突破を試みたものの、塹壕ラインに攻撃をかけるエル帝国は多大な損害を被り、ついに突破はならなかった。
 これらの戦闘で惑星防衛司令官のヤン上級少佐は下級中佐へ昇進を果たした。
 この時点で攻略開始から1か月半が経過しており、エル帝国はドルン上級中将を解任し、オブリアン上級中将が新たに作戦責任者となった。

ヤンラインの戦い

 一方でアルダン帝国も苦しい立場にあった。塹壕ラインの突破こそ防いでいたものの、戦闘のたびに多大な人的損害を出しており、長大な塹壕ラインの兵力密度は日に日に低下していた。
 オブリアン上級中将が、それまでの戦力を集中させての一点突破型ではなく、全戦線にわたって攻勢を行うタイプの攻撃をしてくると、ヤン下級中佐は総退却を命じた。
 退却した部隊はさらに内側の防衛ライン、後にヤンラインと呼ばれた塹壕ラインへと撤退した。
 ヤンラインはエスガプール線と比べ、その円周の長さが5分の1となっており、兵力密度も5倍に増やすことが可能となった。
 しかしこの退却によりエスガプール線内部に存在した多くの農地や水源、工場等をエル帝国側へ明け渡す結果となり、アルダン帝国はその持久力を悪化させることとなった。

防衛線の崩壊

 惑星攻略開始から4か月が経過し、その間にヤンは本国で抵抗の象徴となり上級中佐へ昇進していたが、既に防衛ラインは兵力不足から崩壊が迫っていた。
 13度目の正面攻撃によりついに防衛ラインが崩壊すると、再び総退却が命じられた。しかし後方には退却すべき防衛線は無く、各部隊はバラバラとなって山岳や都市などに立てこもりが行われた。
 しかしこの時にもヤンは単に退却するだけでなく、4か月の間地下で温存していた戦車と火砲を繰り出し、隙を見て攻勢作戦を実施、アルダン帝国からの攻勢を一切予見していなかったエル帝国に手痛い損害を負わせた。
 とはいえ、こうした攻勢も一時の隙をついた反撃に過ぎず、アルダン帝国軍は各地でゲリラ的抵抗を行うしかなくなっていた。
 惑星攻略から6か月目にはアルダン帝国のガストン市における組織的抵抗が終結し、下級大佐となっていたヤンも軍旗を燃やし自決した。
 アルダン帝国本国も以後エスガプールとの通信手段を失い、戦況を確認する術を失った。

ゲリラ戦

 惑星防衛司令官たるヤンが自決しても、アルダン帝国の抵抗は終わらなかった。
 各地に分散した部隊は徹底抗戦を行い、アルダン帝国本国からの救援軍が到来するまで1年以上にわたりゲリラ的攻撃を続けた。

終戦

 狭義のメガ戦役が終結し、アルダン帝国に戦力的余裕が生まれると、エスガプールの奪回作戦が行われた。
 アルダン帝国本国は1年以上前にエスガプールとの通信手段を失っており、エスガプールは既に陥落・降伏したものと考えられていた。しかし陸戦隊が降下すると、惑星の守備隊はごく少数になりながらも、なおも抵抗を継続していた。
 エスガプール惑星守備隊なお抵抗継続中のニュースはアルダン帝国全土を駆け巡り、抵抗の象徴として守備隊は英雄化された。


結果


 アルダン帝国は開戦前に存在した7億のうち、その半数が死亡または行方不明となったが、惑星を守り切ることに成功した。
 エル帝国は約3000万の死者を出し、他惑星への降下攻略計画を中止せざるを得なくなった。


英雄化


 エスガプール惑星のエピソードは終戦後も絶大な人気を誇り、後にはメガ国の国歌もエスガプール惑星の抵抗をテーマとした詩が題材となっている。
 
おお、君は見えるだろうか。暗き銀河の果てで、惑星はまだ抵抗を続けている。
空は赤く燃え、大地は火に包まれ、要塞は廃墟と化した。
敵の艦隊が空を覆いつくし、都市は爆撃され、畑は荒らしつくされている。
だが、抵抗と怒りの旗は未だ折れていない。
砲火の煙の中、我々の旗が、誇らしげにはためいている。
赤と緑ときらめく星は、我々の抵抗の証だ。
敵が恐れる我々の勝利の旗だ。
ああ抵抗旗よ、永遠にはためき続けよ。
栄光と自由の惑星で。



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